賃貸物件に住まれている方の多くは、2,3年で転居を繰り返している方が多いようです。しかし、長期で住まれている方も居ます。今回の記事では、長期間賃貸住宅(同一部屋)に住まれている方向けの記事になります。

長期間住まれているお部屋の退去時には、入居した際と室内設備の状態は変わっていますよね。設備は、時間と共に劣化するのが一般的ですので、入居当時の設備の状態と、退去時の状態とでは異なるのが当たり前です。

退去する際に、支払わなくていい費用と払わなければならない費用をきちんと理解していただく事で、退去時の費用を抑えることができます。


退去時に必要な費用とは・・・

賃貸物件に住んでおり、長期間住まれていると日常生活をしているだけでも既存設備に不具合が生じたり、設備等に劣化が現れてきます。この建物価値の減少の事を、経年劣化・通常損耗といいます。

経年劣化とは・・・文字通り自然的な劣化や損耗等の事を言います。
通常損耗とは・・・通常の使用により生じる損耗等の事を言います。

この、経年劣化・通常損耗については、借主側の費用負担で修繕する必要は無い。とするのが原則になっています。例えば、貸主負担の経年劣化・通常損耗は、カレンダー等を貼った事によるクロス劣化。日照等による畳の変色。などがあります。

しかし、先の記事にも記載しているように、借主の故意・過失等による損耗等については、借主の費用負担で修繕する必要があります。借主負担の故意・過失は、たばこによる畳やフローリングの焼け焦げ。引っ越し作業等による傷。などになります。

このように経年劣化・通常損耗というものを理解していると本来であれば、貸主の費用負担で修繕するものを借主負担で補修して。と言われた時に対処する事が出来ます。


次に、原状回復・・・

一般的な賃貸借契約書には、「借主は本契約終了時には、本物件を現状に復して明け渡さなければならない」という定めがあります。この案文をみると、入居する前の状態に回復しなければならいのでは?と思われる方も多いでしょう。

しかし、上記にも記載しているように、一般的な賃貸借契約における「原状回復」とは、経年劣化・通常損耗、などによる価値の減少については、回復しなくて良いのです。もちろん自身の故意・過失による損耗等については、借主側の費用負担で補修しなければなりません。ですが、「煙草による畳の焼け焦げがあり、畳全てを張り替える必要があるので、費用を請求します」のような場合には、焼け焦がしてしまった畳1枚分の費用負担だけで良いという過去の判例があります。

このように費用負担をしなければならない場合でも、借主の費用負担は自身が毀損・破損させてしまった箇所だけの費用で良い。ということなのです。

注意しておいていただきたいのは、退去時だけに清掃をしたからといえ、それまでに清掃を怠っており、酷い水垢やカビの発生・結露の放置によるシミなどは、借主側に責任があるため、費用を請求されてもこれを拒否することはできません。これは善管注意義務違反となります。

善管注意義務違反とは、「善良なる管理者としての注意義務」をいい、日常生活中における清掃等も含まれるので、上記のような場合には、善管注意義務違反となるのです。


上記内容を網羅している国土交通省の賃貸住宅トラブル防止ガイドラインの退去時の復旧という資料があります。減価償却・経年劣化の考え方などについても詳しく記載されていますので、参考にして下さいませ。

日常生活における破損等がなく、清掃などもこまめにしておれば、退去時に借主費用負担で工事代金請求されることがなくなりますので、覚えておいていただくと今後の退去の際にも役立つことになるでしょう。

賃貸住宅トラブル防止ガイドライン(国土交通省のガイドラインを分かりやすくした資料になります)